欧州は、大きな資金調達ギャップに直面しており、インフラ投資ニーズが高い一方で、公的財政には制約があります。欧州委員会は、資本市場同盟(Capital Markets Union)行動計画の一環として、健全性規制が銀行や保険会社による投資を不必要に制約しないようにすることを目指しています。生命保険会社は、長期の負債と大きな投資余力を有していることから、適切な資本規制の枠組みの下で、生産的な長期投資を支える上で有利な立場にあります。ソルベンシーIIにおける長期保証(long-term guarantee、LTG)の測定は、特に退職給付関連商品やその他の長期商品について、長期投資を支援することを目的として設計されています。こうした測定は、短期的な市場変動が保険会社のバランスシートに与える影響を軽減することにより、資産の早期売却圧力を抑え、長期かつ流動性の低い資産への継続的な投資を後押しします。
LTGのツールキットには5つの仕組みがあり、その中心的要素の一つがマッチング調整(matching adjustment、MA)です。実務上、MAは、適格な負債について、保険会社がマッチした固定利付資産から導かれる割引率を用いて評価することを認め、その際には、ファンダメンタル・スプレッドを通じて見込まれる信用リスク分を差し引きます。MAの利用には、監督当局の承認や継続的な資産・負債のマッチングを含む、ソルベンシーIIおよびソルベンシーUK上の詳細な要件の対象です。本稿では、以下の点について論じます。
- 欧州におけるMAの採用状況:スペインと英国の違い
- 英国におけるMAの初回適用:保険会社が早期に利害関係者と関与する必要性
- 英国で進化を続ける枠組みとしてのMA:継続的な発展と高度化を踏まえ、アプローチの拡張ができるよう各社はどのように備えるべきか
本稿は、当初「The European Actuary」2026年6月号に掲載されました。